メニュー

子宮頸がんの現状とワクチンQ&A

[2023.08.30]

こんにちは、千葉市中央区都町のにへい脳外科で産婦人科診療をしている林です。

子宮頸がんワクチンのCMがテレビでもみられるようになりましたね。接種を検討されている方も多いと思います。私はちょうどワクチンの出始めの頃中学生で接種しました。

今2歳の娘にも定期接種の学年になったら接種する予定です。

今日は日本の頸がんワクチンを取り巻く現状と、ワクチンに関するQ&Aを投稿したいと思います。

日本の現状

2022年4月から定期予防接種として公費での接種が再開しましたが、令和2年のデータでの接種率(1回接種を終えた人)はわずか16%です。ワクチンは3回接種が基本ですが、3回接種した人は7%という少なさです。

同じく定期接種の小児用肺炎球菌やHibワクチンの接種率はほぼ100%ですので、明らかに低いことがわかります。

カナダ、イギリス、オーストラリアなどの諸外国では80%を超えていて、オーストラリアでは2028年までに子宮頸がんは撲滅できると言われています。

一方で日本の子宮頸がんの罹患率はここ10年では増加傾向で、毎年1万人が子宮頸がんになり、毎日約8人が子宮頸がんで亡くなっています。

 

子宮頸がんの罹患率は25歳から一気に上昇するので、妊娠・出産時期の女性に見つかることが多いです。妊娠すると妊婦健診で子宮がん検診を行いますが、そこでがんが見つかって・・という経験も少なからずあります。

ワクチンと定期的な検診で防げる病気で、妊娠をあきらめて治療しなければいけなくなる患者さんを目の当たりにすると本当に心が痛み、ワクチンの啓発はすべての産婦人科医の責務だと思っています。

とはいえ、厚生労働省がワクチンの定期接種を中止していた事実や接種推奨年齢が11-16歳と若年であることから接種するご本人やご家族が接種を躊躇する気持ちもよくわかります。

診療でよく聞かれる質問をまとめてみますので、少しでも皆様の不安を軽減する助けになるといいなと思っています。

子宮頸がんQ&A

なんでがんがワクチンで防げるの?

ガンをワクチンで防ぐ、というと不思議ですよね。ワクチンはウイルスからの感染を防ぐためのもので、実はウイルスが原因で起こるがんは全体の20%もあります。子宮頸がんの原因になるウイルスはHPV(ヒトパピローマウイルス)と言って、HPV1型、2型、、と200種類以上型がありその中で子宮頸がんを起こしやすい型(ハイリスク型)は16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、66型、68型などです。

HPVはありふれたウイルスで性交渉で感染し、性交渉経験のある女性の85%は感染します。ほとんどは自然に治ってしまうことが多いですが、持続感染し続けた1%の人ががんになると言われています。HPVワクチンはハイリスク型のHPV感染を予防することで子宮頸がんを予防します。

ワクチンの種類はどれがいいの?

現在公費で受けられるワクチンの種類は2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類です。

それぞれHPVの型の中の2種、4種、9種に対して予防効果があります。4価と9価のワクチンには子宮頸がんではなく尖圭コンジローマを引き起こす低リスク型HPV(6.11型)への予防が含まれます。効果を表にまとめました。

  2価ワクチン(サーバリックス) 4価ワクチン(ガーダシル) 9価ワクチン(シルガード9)
予防するHPVの型 16型、18型 6型、11型、16型、18型 6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型
予防できる病気 子宮頸がん

子宮頸がん+

尖圭コンジローマ

子宮頸がん+

尖圭コンジローマ

子宮頸がんへの予防効果 約70% 約70% 約90%
接種回数 定期接種の場合 3回 3回 2回
15歳以上の場合 3回 3回 3回

副作用の出現頻度に関しては、シルガード9で注射部位の疼痛が出やすいといった報告もありますが安全性に問題はありません。

一概にどれが良い、という話ではないですが、9価ワクチンを選択される方が多いです。

 

副反応は?本当に大丈夫なの?

以前にニュースで話題になっていたHPVワクチン接種後の「多様な症状」は複合性局所疼痛症候群(CRPS)と呼ばれ不随意運動や全身の痛み、手足の動かしにくさなどを呈する疾患です。これについては、HPVワクチンとの因果関係は証明されていません。

また重篤と言われる副反応にギランバレー症候群や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)がありますが、出現頻度は下記の表のようになっています。

HPVワクチンの接種にかかわらず小児のADEMの頻度は10万人に0.3人、ギランバレー症候群に関しても10万人に0.4~4人と言われており、HPVワクチン接種後に頻度が上昇しているわけではありません。

ワクチン接種後に見られる副反応が疑われる主な症状とその報告頻度

どのワクチンにも副反応は必ずあります。HPVワクチンで報告されている副反応は下記があります。

【HPVワクチン接種後の主な副反応】
HPVワクチン接種後の主な副反応

接種するかどうかは最終的にはご本人とご家族の判断となりますが、しっかり事実を確認して決めていただけるといいなと思っています。

 

接種スケジュールを教えてください

ワクチンはこれまで3回接種が基本とされていましたが、シルガード9を15歳未満で接種開始した場合は2回で済みます。

学生の方は冬休みに1回目を打っておくと、2回目は春休み(2回接種の方は夏休み)、3回目が夏休みの頃なのでおすすめです。



※1: 1回目と2回目の接種は、少なくとも5か月以上あけます。5か月未満である場合、3回目の接種が必要になります。
※2・3: 2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の2か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上(※2)、3回目は2回目から3か月以上(※3)あけます。
※4・5: 2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の1か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上(※4)、3回目は1回目から5か月以上、2回目から2か月半以上(※5)あけます。

 

予約は必要ですか?

ワクチンを注文する関係で必ずご予約が必要です。接種希望日の10日前までに電話で予約をお取りください。

土曜日の接種も行っております。ワクチンに関する相談だけでも来院して頂いて構いませんので、お気軽に受診してくださいね。

 

千葉市中央区都町 にへい脳外科

産婦人科 林博美

出典:厚生労働省

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME