更年期
「〇〇の症状で困っているんだけど更年期でしょうか?」
とてもよく聞かれる質問ですが、実は「更年期」を診断する術はありません。
「更年期症状」とは、閉経をはさんで前後5年の間に起こる症状で、他の病気の可能性がないものです。
女性ホルモンの低下にストレスや睡眠不足などの社会環境要因・個人因子が複雑に絡み合って様々な症状を引き起こします。
代表的な症状
代表的な症状としては下記があり、大きく4つに分けられます。
①血管運動神経症状
hot flash(のぼせ・ほてり・発汗など)、手足の冷え、動悸 など
②精神神経症状
イライラ、憂うつ感、やる気の低下、焦燥感、不眠、めまい、頭痛 など
③知覚神経症状
手足のしびれ、感覚がにぶい、耳鳴り など
④運動器官の症状
疲れやすい、肩こり、腰痛、関節の痛み など
下記の簡略更年期指数(SMI)を使って、自分の更年期の程度を調べることができます。
診断
前述したように、更年期には確定診断の術はありません。
更年期だと思って治療していたら実は違う病気だった・・・ということが起こらないように、他の病気でないことを確認する必要があります。
当院では、更年期疑いの患者様がいらした場合はしっかりと問診を行い、考えられる他の病気がないかできる限り検査させて頂きます。
検査内容(問診の内容によって異なります)
- 採血・心電図・骨量検査・エコー・MRI など
当院には脳外科・整形外科もありますので症状によってはそちらの診察をおすすめする場合もあります。
治療
更年期障害の治療には下記があります。
1.漢方薬
次にあげるホルモン補充療法と並んで更年期治療の2本柱となるもので、更年期の多彩な症状に効果があります。自分にあった漢方だと、内服して1週間程度で効果を感じられるかと思います。問診と診察で漢方の種類を決めていきますが、1ヶ月程度内服して効果が感じられない場合は種類の変更を検討しましょう。
2.ホルモン補充療法(HRT)
更年期症状の中で、特にhot flashや発汗などの血管運動神経症状に効果が出やすいと言われています。減少する女性ホルモンを補充するため、骨粗鬆症の予防や脂質異常の改善につながったり、肌や髪がきれいになったりといった嬉しい効果もあります。
ただし女性ホルモンの補充による副作用もあるためHRTを施行できない方がいたり、HRT中は色々な検査をして身体に悪い影響が起きていないかチェックする必要があります。
HRTの禁忌など
HRTを施行 |
HRT中は慎重に経過観察が |
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上記に当てはまらない方でも、HRT開始前・HRT中には必ず検査を行います。
当院では下記のようなスケジュールで行なっています。
HRT開始前の検査
- 血圧、身長、体重測定
- 採血検査 自費4400円
(健康診断の結果で代用可能です。6ヶ月以内のものをご持参ください) - 子宮・卵巣超音波検査
- 子宮頸がん検診(6ヶ月以内)
- 子宮体がん検診(6ヶ月以内)
- 乳がん検診(6ヶ月以内。当院では施行できませんので、結果をご持参ください)
HRT施行中の検査
診察ごと
- 血圧、身長、体重測定
半年に1回
- 採血検査(自費4400円)
- 子宮、卵巣超音波検査
1年に1回
- 子宮頸がん検診
- 子宮体がん検診
- 乳がん検診
HRT終了後も、5年間は子宮がん・乳がんの検査が推奨されています。
3.プラセンタ注射(更年期障害には保険適用があります)
ヒト胎盤(プラセンタ)から抽出した生理活性物質を注射する方法で、更年期障害と乳汁分泌に保険適用があります。当院で使用しているメルスモンというプラセンタは更年期の約70%の方に効果が認められています。週2−3回の注射がもっとも効果を感じやすいと言われていますので、症状が強い時は週に2−3回、落ち着いてきたら週に1回程度で継続すると良いでしょう。
4.エクオール
大豆イソフラボン由来のエクオールという成分が女性ホルモンと構造が似ていて、弱い女性ホルモン作用を持つことがわかっています。そのためサプリメントなどで継続してエクオールを摂取することでhot flashや肩こりの軽減、肌のハリや骨密度などにも良い影響を得ることができます。
当院では「エクエル」の販売をしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
エクエル(1袋30日分) | 4000円 |
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5.抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬
うつや不安感などの精神症状がメインで上記治療が無効だった方に考慮される治療法です。
6.生活の改善
食生活の改善や運動習慣を見直して身体的・精神的な負担を減らしてあげることもとても有効な治療法です。問診を通してご自身の悩みを具体化して人に話すだけで症状の改善が見られる方もいらっしゃいます。どうぞお気軽にご相談くださいね。